忙しい週末に限って昔懐かしいお客様がお店に現れる。「どうもお久しぶりでございます」と、まずは挨拶を済ませてお席について頂く。そこからはほとんど話も出来ないで後はお帰りになる時に「またのお越しをお待ちしております」と、ありきたりの挨拶ぐらいしか出来ない。こちらもお客様も名残惜しさ満面の顔になる。昨日来てくれればゆっくりとお話が出来たのに・・・。開店前に準備が整うだけ整ってしまった日、つまり完璧な状態でお客様をお待ちしている日・・・そんな日に限って暇、それも半端じゃないくらいに暇になる。仕込がうまくいかずリズムに乗り遅れたような平日、今日は予約もなしと安心していると、とたんにお客様が雪崩のようにお店に入ってきて満席。ある客様が一番最初のお客様になった日には忙しい。またあるお客様が一番最初のお客様のときにはすっごく暇。ジンクスってか。

何処のお店でも、誰でもゲンをかついだり、ジンクスって言葉を思い浮かべたりすることがあると思うけど、今日の貴田乃瀬はジンクスがたくさん一度にやって来た。お店が開店する前に、６時から開店なのにこのお客様は５時にお店に来てしまって、おかみさんは掃除の真っ最中だし私は仕込みの追い込みで大忙し・・で「すいません、もう少し時間がかかるんですがぁ」と言ったんだけど「隅っこでいいから」と・・とにかく暑い外にいるのなら冷房の聞いた部屋の中に入れてくれと・・無理を通せば道路は引っ込む。仕方ないのでカウンターの隅に入っていただいた。自分たちの食事もまだだったので「すいません、ご飯いただきます」と大急ぎでご飯をかき込みながら「こんな日は忙しくなるぞぉ・・ジンクスがあるもんなぁ」って考えてた。定時になりちゃんとお店を開店。一番最初に入ってきたお客様は、そのお客様が一番の日はものすごい暇・・と決まっている不思議なお客様。お顔を見たとたん「せっかくの週末だけど残念だなぁ、でもあのお客様が一番だものなぁ」なんて考えいるとおかみさんが「さっき掃除していたらカウンターの下で１００円玉拾ったよ、今日は忙しいよきっと」・・これも貴田乃瀬のジンクス。そうこうしているうちにアルバイトの女の子から電話で「すいません今日は遅れてしまいます」・・こんなときには暇になる・これも貴田乃瀬のジンクス。

忙しかったり暇だったり、ジンクスに振り回されてそれだけで気疲れしてしまった。