貴田乃瀬に一人でお見えになるお客様は少ない。少ないだけでいないわけではないのだ。どちらかといえば男性よりも一人でお見えになるのは女性のお客様のほうが多い。私に必要以上に隠しきれない魅力があるからなのだろうか？。
私の作る料理の量が若干多目なのは有名な話だが、それにはそれなりにちゃんとしたわけがあるのだ。田町とはいえ、お祭り以外は一番外れた場所にある貴田乃瀬に通りすがりに入ってくるようなお客様はいないのだ。遠州病院の裏にある稲荷通り・・丁度お稲荷さんのほぼまん前に貴田乃瀬はある。有楽街付近からならば、歩いて５分。なぁ〜〜んだ町中ジャン・・確かに町中なんだけど町中の端っこ。そんな端っこにある貴田乃瀬まで足を運んでもらうには、町中にはないような料理だ。ここまで歩いてこないと食べられないような料理だ。で、せっかくここまで歩いてきてもらうのなら一人よりも二人だと思っても罰はあたらないと思うのだ。思うから一人ではちょっとだけ量が多いのが貴田乃瀬の料理なのだ。

あああっ、今日も貴田乃瀬の美味しいあの料理が食べたいなぁ・・あの料理も、この料理も食べたい・・だけど貴田乃瀬の料理って、ほんの少し量が多いからなぁ・・・そうだ、勇気を出してあの子を誘ってみよう、一人より二人だよねぇ・・・って言うようなシチュエーションを期待しての量なのだ。・・そうだ、今日は料理の話じゃなかったっけ！。貴田乃瀬に一人で来るお客様の話だ。そうなのだ、貴田乃瀬始まって１３年になるけれど、今日は新記録なのだ。一人でお見えになったお客様の数が新記録なのだ。カウンターの隅から隅まで、一人でお見えになったお客さま。見ず知らずのお客さま同士が、多少の縁と野球の話し、料理の話しでそれぞれに盛り上がっている。名刺交換まで始まった。１３ではじめてみる光景だ。貴田乃瀬はこんなシチュエーションもありのお店なのだ。新しい一面を発見したとともに、新しい可能性も見つけた。今日はいい、一日だった。