植物としての名前は「蓮」、食用とする根茎が「蓮の根」、すなわち「蓮根」です。日本で蓮根の栽培を始めたのは江戸時代のはじめで、これが在来種となっています。現在、栽培の大半を占める中国種（支那蓮系）は、昭和初期に導入された物で、大型で、蓮根も太く大きく、形は偏平で、山陽地方を中心に四国から九州へ広がっていきました。やはり中国系で徳島に多い備中種も関西以西の重要種です。在来種は病害に弱いのが難点ですが、味がよく、千葉茨城に多い早掘り用の天王種が代表的です。

さて、この蓮根の旬はいつかと言うと、１１月から３月の間、早出しの新蓮根は７月下旬から市場に出回り始めます。１０月の料理に蓮根を使うのは少し変な感じもしますが、これから出てくる百合根のつなぎのつもりで作ってみました。摩り下ろした蓮根に道明寺を混ぜて（三分の一ぐらいの量）、塩、醤油、味醂、ほんの少しの胡椒、で味を付けておきます。丸く、饅頭のように形を取ったあとで器に盛り込み蒸し器で火を通します。こんがりと焼いた粟麩を饅頭の上において、さらに味のアクセントに山葵漬けを置き、その上から生姜餡をかければ出来上りです。女性のお客様には結構人気のあるメニューです。

志ら菊の大吟醸、今回はこのお酒でいってみたいと思います。口の中で餅餅としている蓮根饅頭を、ワインのようなこのお酒がさらりと洗い流してくれるようです。