料理とお酒の相性を知っていて食べたり飲んだりする方が、なおさら美味しく味わえます。
ソムリエがワインを薦めるように、料理に合わせた日本酒を提案する時代が来ました。 |
うちのお店で使っている「ミリン」は前回の「三河ミリン・角谷文治郎商店『三州三河みりん』」ですが、もう1つ熊本で作られている「赤酒」というのもあります。
熊本に古くから伝わる「赤酒」は、平安時代の「延喜式」にも記録されている「黒貴」の製法を受け継ぐ歴史の古い醸造酒の一種類なのだそうです。清酒と似た製法で作られ、特に熊本では、お屠蘇酒として愛飲されています。酒造法からは酒として分類されるため、酒販店でしかお目にかかれない存在です。
しかし、日本料理の世界では愛用する料理人が多い事で知られています。非常に評価の高い調味料なのです。その最大の特徴はなんと言っても「素材をふっくらと柔らかく仕上げる」と言う点ではないでしょうか。正直言って、私はこの仕事に着いた最初のお店がこれを使っていたものですから、何も考えずに自分のレシピの中では欠かすことのできないものの1つになっていたのですが、確かに「ふっくら」とするのは他のミリンまたはミリン類似調味料と比べるとよく分かります。
通常、肉や魚をミリンで煮ると、素材の細胞壁がアルコールによってつながって煮崩れしにくいものですが、この「赤酒」は反対に繊維をほぐして「ふっくら」柔らかく仕上げてくれるようです。これは「赤酒」が、モロミの段階で保存性を高めるために木灰が加えられているからで、酸性のミリンに対してこちらはアルカリ性ということが関係してきます。これがうちのお店で「赤酒」を使っている理由です。・・・本当はつい最近まで知りませんでしたが。
私は野菜などの煮物にこの「赤酒」を使っていましたが、魚でも肉でも良いようです。ものは試しと貴田乃瀬名物「キンキのあら煮風」に使ってみました。いつもは「三河ミリン」を使いますが「赤酒」を使ってみると確かにふっくらと仕上がるようです。
・・・困った、これからはどっちを使って言ったらいいのか迷ってしまいます。