料理とお酒の相性を知っていて食べたり飲んだりする方が、なおさら美味しく味わえます。
ソムリエがワインを薦めるように、料理に合わせた日本酒を提案する時代が来ました。 |
「椀物を頼めばその料理人の腕が分かる」と言うのは、昔から料理人の腕を評価する言葉の一つとして使われてきました。出汁の味がストレートに出る椀物には、その料理人の実力がて端的に現れてしまいます。確かに、出汁を引くという技法そのものはシンプルな作業ですが、ごまかしがきかずに難易度の高い仕事と言えます。
出汁を美味しく引くために最低限守りたいと思うのは次の3つです。まず、質のいいお水を使う事。次に、出汁を引く素材の質。最後に、素材を加熱する時間や引き上げるタイミング。
これらのことを簡単に説明しておきます。「質のいいお水」・・これは説明するまでもなく、水道水そのままを使うのではなく、浄水器を通したり、そのまま一晩汲み置きにしたりして少しでもカルキの匂いをとるようにします。もっといえば、いいお水のある井戸でも掘り当てるのがいいのかもしれませんが、なかなかそうはいきませんものね。うちのお店では、自然石をいくつかと素焼きの焼き物の破片を鍋に入れて一晩汲み置きした水でだしをとっています。
「出汁を引く素材の質」・・たとえば、昆布は羅臼産の昆布を使い、鰹節は、表面にカビ付けをしていない「荒節」の本筋を使う。あっさりとした出汁を引くために背中の方の「雄節」の血合いを除いた削り節を使う(あああっ・・これだけでも高そうだナァ)。鰹節は鮮度が大切、日がたった物をお店で削るくらいなら、新鮮な削り節を毎日業者から仕入れた方がどれほどいいか。
「タイミング・・・」・・・大きな鍋を使うときには、昆布を水の入った鍋を強火にかけたり、少なめな分量の時には弱火で加熱するとか、何度かいろいろ繰り返してコツをつかみます。出汁を引くタイミングと言うのは、いくら口で教えてもらっても自分で出汁を引くようになって見ないと分からない、感覚的な部分があります。一見シンプル、簡単な作業に見える「出汁を引く」と言う仕事は、職人技と言うか、およそ感覚的な領域に入る仕事でしょう。